はじめに
2022年にslackが料金プランを変更し,無料プランのメッセージが90日で消えるようになった(一方でアップロードできるファイルの容量が無制限になったようだ).
ビジネスチャット用途であれば,それでも問題ない気もしたが,個人的にメモや備忘録としても使用していたので,90日で消えると困る.
代替ツールを探していたところZulipというツールを見つけたので,使用感をまとめてみる.
Zulipとは?
オープンソースプロジェクトで制作された,Slackライクなビジネスチャットツールである.マルチプラットフォーム対応であり,Windows, mac OS, Linux, Android, iOSのアプリがある(ターミナル版もあるらしい).
サービス形態は大きく分けると2つあり,Zulip cloudがSlack感覚で使えるクラウド版Zulipであり,Self-host Zulipが自前のサーバーを用意する必要があるオンプレミス版Zulipである.本稿は,Zulip cloudに関して述べている.
Zulipの使い方(ほぼリンクのみ)
- Zulipのヘルプページ(https://zulip.com/help/)を見れば,使い方は書いてある.
- インストール方法や登録方法なども,ググれば日本語で色々出てくるので割愛(こことか).
- メッセージに関しては,トピックを設定できるのは特徴的である.分類に便利.
あと,マークダウン記法が使えるのは良い.詳細はこちら.
Zulipを使ってみた印象
良いところ
トピックという概念
チャンネルの中のメッセージをトピックで分類できるのは非常に便利.
無料版は,昔のSlackと同じ内容
10000メッセージまで保存され,5 GBのストレージが付く(プラン内容は変更があるかもしれないので,要確認 https://zulip.com/plans/)
メッセージがマークダウン記法に対応
メッセージがマークダウン記法に対応しているので,ソースコードをシンタックスハイライトして共有したり,キレイに数式を書いたりするのが楽.
詳しくはこちら → https://zulip.com/help/format-your-message-using-markdown
オープンソースなので,自前でサーバーを用意すれば容量無制限
自前のサーバーにZulipを構築(Self-host)すれば,オンプレミス環境を構築でき,容量制限等がなくなる.Self-host zulipの説明 https://zulip.com/self-hosting/
Slackの内容をZulipにインポート可能
SlackからZulipにメッセージやチャンネル,メンバーをインポートできる.
インポートの手順
手順の詳細は,こちら (Import from Slack https://zulip.com/help/import-from-slack).
1.Slackでデータをエクスポート
Slackからメッセージデータをzipファイルでエクスポートする(参考URL).そして,ユーザーデータやカスタム絵文字を受け渡すためボットをSlack appで作成して,ワークスペースにインストールする.インストール後,トークンが生成されるので,Bot User OAuth Tokenをコピーする(xoxb-で始まる文字列).ブログ[1][2]とかに,ボットの作り方,OAuth Tokenの設定の仕方,作成されるトークン(xoxb-)について書いてあるので,参考にすると良い.Bot TokenのScope(OAuth Scope)の設定は,Zulip公式サイトに掲載してある内容に合わせて設定する.
2.Zulipにデータをインポート
Zulipの担当者 support[at]zulip.com([at]を@に変換) に,(1)zulipで使いたいワークスペース(アカウント)の名前,(2)エクスポートしたzipファイル,(3) Bot User OAuth Tokenを記載したメールを送付する.その後,担当者から返信が来る(結構すぐ来た.1日以内だと思う).
ちなみに私は,存在するzulipのワークスペース上にデータをインポートするのだと勘違いしていて,あらかじめワークスペースを作ってしまった.しかし,その必要はなく,上記の(1)を伝えることでzulipの担当者が作ってくれる.むしろ,あらかじめワークスペースを作ってしまうとデータをインポートできないらしく,ワークスペース(zulipでは、”Realm”というらしい)をdeactivateする必要があった.
メールは以下の感じで問題なかった.
タイトル:Please import data from Slack into zulip cloud
Dear Sir or Madam,
This is ×××
Could you import my slack data, which are attached in this mail,
into zulip workspace?
Required information is as follows;
---------------------------------------------------
【Slack data】 エクスポートしたファイルの名前.zip
【Slack API token】 xoxb-●●●
【Desired subdomain】 ○○○.zulipchat.com
---------------------------------------------------
Sincerely,
--×××
その他のメリット
Slackの不便な点を意識して設計されたようなので,slackには無い特徴が他にもある(zulipの設計思想 https://zulip.com/why-zulip/)
悪いところ
メッセージ検索はSlackの方が優秀
Zulipのメッセージ検索において,キーワードの部分一致ではメッセージが検索に引っかからない.例えば,「ベイズ統計」という文字がメッセージに含まれていた時,「ベイズ」では検索に引っかからない.Slackなら検索できた.
つまり,検索できないわけではないが,Slackと比較すると日本語検索が弱い(英語検索は良いので,意識して英語のキーワードをメッセージに入れておくと良いかも).
Windowsアプリの動作が若干不安定
ノートPCなどで一度ネットワークが切れた後に再接続すると,アプリの画面がエラー表示になっている時がある.その際には,画面をリロード(Ctrl + R)する必要がある.
pdfファイルがアプリ内で閲覧不可
メッセージにアップロードされた画像ファイルはアプリ内で閲覧できるが,pdfファイルはアプリ内で閲覧できない.メッセージ内のpdfファイルへのリンクをクリックすると,ファイルがダウンロードされるので,adobeなどのpdfビューワーで閲覧することになる.
Androidアプリのワークスペース(アカウント)の切り替えが面倒
ワークスペースの切り替え時に,Slackであれば「アイコンをタッチ」「ワークスペースの選択」の2工程であったが,Zulipは「アイコンをタッチ」「”アカウントの切り替え”をタッチ」「アカウントの選択」という3工程かかる.
Androidアプリ版のリンクのシェアが面倒
ブラウザ等で調べた内容をリンクでシェアする際に,Slackであればワークスペースを選択できた.Zulipは,現在のワークスペース(アカウント)のみしか選択できない(ストリームやトピックは選択できる).そのため,シェアする先のアカウントを変更したい時は,一度アプリを立ち上げてアプリ内でアカウントを切り替える必要がある.
連携できるサービスが少ない
Slackでも特定のサービスしか使わないので,個人的には問題ないが,連携できるサービス・アプリが少ない(120ぐらい? https://zulip.com/integrations/)
まとめ
Zulipは無料で使えるツールとしては,非常に優秀である.メモ帳や備忘録としては十分に使用可能であると思っている.ただ,私の用途においては,UIやUXはSlackに軍配があがる.個人的には,部分検索が不可な点と,リンク共有が手間である点が致命的である.バージョンアップにより改善される可能性はあるので,期待したい.
SlackとZulipの割引プランについて
slackは教育支援プログラムを利用すると85%オフなので,申請すればプロプランが一人100~200円/月ぐらいで使用できる.学生とか研究室は,このプランでslackを利用すれば良いかも.
ちなみにzulipにもディスカウントがあり,一人6.67ドル/月のStandard Plan(Slackのプロ版に相当)が,Education用途なら85%オフ,研究者は無料になるらしい(https://zulip.com/plans/の下の方に記述あり).
個人的にはお金払うならSlack使うが,トピックやマークダウン記法などのzulip独自の機能を使いこなせばslackよりも有効な場面もあるのかもしれない.そもそも,チャットツールとしてはSlack > Zulip >>>>>Teamsなので,zulipは十分使える.
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